汁粉

ふるさとの正月と思い出の味

甘いあずきの加工品は、団塊世代にとって思い出につながる、ふるさとの味。

元日の餅は、しんこのあんころ餅。
元旦にお雑煮という習慣は、東京に来てから初めて知った。
元旦は、臼で餅をつくのが当たり前だった。

(貧乏な家の風習だと思っていたこの「臼で餅をつく」習慣が、
実は意外と贅沢なものだということは、大人になってから、
「臼で餅をつく正月宿泊プラン」を体験して初めて知った。)

しんこの餅は、歯切れがよく、それを餡に入れて食べる。
漉し餡でも粒餡でもよかったが、漉し餡が多かったような気がする。

なんと、これを関西では「善哉(ぜんざい)」と呼ぶのだそうだ。
「夫婦善哉」という、関西地方で流行ったテレビ番組もあった。
さしずめ、あんころ餅のように甘いが、ベタベタくっつかない夫婦のことか。

のびーる餅もあった。
保存用に叩いて平たくし、切り餅にする。
つきたてはベタベタとくっつくので、お決まりの「からみ餅」や「納豆餅」にする。
からみ餅の名前の由来は、大根おろしが辛いからか、それとも餅に絡めるからかは分からない。

二日目以降は、切り餅を焼いて食べる(しんこの餅はお湯で柔らかくする)。
あずきの汁に入れたものが「汁粉」。
ちゃんとした「しるこ」もあった。

切り餅でも、しんこ餅でも、粒餡でも漉し餡でも、お湯でのばして作れば、みんなまとめて「しるこ」。

思い出のふるさとには、「善哉」という言葉の欠片すらなかった。

夏の思い出のスイーツのあずき氷。
なんと、これを沖縄では「ぜんざい」と呼ぶのだそうだ。
あずきはあっても餅がない。
暑い地方では、氷が餅に見えるほど貴重なのだろうか。

方言とは、些細な違いから生まれるものらしい。
田舎では「善哉」などという難しい言葉は覚えきれず、
餅を餡子に転がすから、「あんころ餅」という分かりやすい名前が使われたようだ。

「善哉と汁粉の違いは何ですか?」と改めて尋ねてみると、さまざまな意見があった。

関西と関東での呼び名の違い

餡の汁の有無による違い

漉し餡が「汁粉」、粒餡が「善哉」

餅と餡が分かれているのが「善哉」、一緒に煮てあるのが「汁粉」
……などなど?

善哉の起源は、ある著名人が「うまい! 善哉(よきかな)!」と言ったことに由来するという。
そう考えると、いろんな「善哉」があって当たり前。
汁粉との違いを細かく調べるのは、少し野暮なことかもしれない。

善哉と汁粉の違いは方言か?

「善哉(ぜんざい)」と「汁粉(しるこ)」の違いは、地域による呼び分け・食文化の違いであり、(広義の“方言的表現”)といえます。

地域ごとの呼び名と内容の違い

地域ごとの呼び名と内容の違い(地域 呼び名 内容の特徴)
関西地方(京都・大阪) 善哉(ぜんざい) 粒あんベース、汁気のある餡に餅や白玉を入れる
関東地方(東京など) 汁粉(しるこ)  こしあんベースが多く、汁気のある甘味。粒あんは「田舎汁粉」と呼ばれる
沖縄地方     ぜんざい     冷たいかき氷に甘く煮た金時豆やあずきをのせた夏のスイーツ

呼び名に込められた背景

**「善哉」**は、仏教語「よきかな」に由来し、「おいしい!」という意味合いで関西を中心に広まりました。

**「汁粉」**は、「汁のような餡」を表し、関東地方で定着。

同じ「餅+あずき」の甘味でも、呼び方や食べ方が異なるのは、地域文化の反映です。

よくある違いの分類まとめ

分類軸     善哉   汁粉
餡の種類 粒あんが多い こしあんが多い
餡の汁気 少なめ〜とろり 比較的多めの汁状
餅との関係 別々に添えることも 餅ごと一緒に煮ることが多い
使用頻度 関西中心 関東中心
バリエーション 沖縄ではかき氷 関東では「田舎汁粉」など

【結び】言葉の違いが生む、あたたかい記憶

言葉が違えば、思い出の形も少しずつ変わっていく。
けれど、あずきの甘さに包まれたあの正月の温かさは、呼び名がどうであれ、私の中では確かに「あんころ餅」として残っている。

善哉か、汁粉か。
その違いを気にするよりも、いっしょにそれをすくって食べた人たちの笑顔を、私は大事にしたい。

関連サイト:千葉県下総地方の方言